こんにちは。メカニックの渡辺です。今回は 駆動系周辺の異音調査作業レポートです。
ご自分でバイク整備をされているお客様からのご依頼で、極めて小さな音ですが異音の調査をしていきます。実走にて異音を確認し、簡単な調整では直りきらない状態であったため、原因になり得る部分を一つずつクリアしていきます。
まず専用工具で、ディレーラーハンガー(変速機を取り付ける部分)の歪みを確認し、ホイール面と水平になるように修正します。
※ディレーラーハンガーは自転車を変速機側に倒してしまったり、落車をすると歪んでしまいます。
ポイントなのですが、ディレーラーハンガーの歪みチェックの前と後には、取り付けボルトの緩みもチェックします。小さなボルトで緩みやすく、緩んでいると修正しても意味がありません。
小さなネジなのでオーバートルクにならないように、注意して増し締めします。
リアディレーラー(後ろの変速機)自体の歪みもチェックしたらトルクレンチで組み戻します。
次に、ワイヤーの状態を確認します。レバーの内部に隠れているワイヤーを取り出し、切れかけていないかチェックします。擦り切れ、破断は無かったのでグリスを塗布し納めます。
ゲバだったようにポリマーコーティングが剥がれていますが、シマノからは性能の低下は無いとのアナウンスがあります。ただこのコーティングはワイヤーから完全に剥がれ落ちると、カスとなりアウターキャップにつまってしまいワイヤーの動きを妨げることがありますので、キャップ内も点検をします。
フレームのアウターワイヤー受けの周辺もチェック
砂などの汚れで摩擦がおこりやすいフレーム下側の
インナーワイヤーガイド部分の状態もチェックし清掃後グリスを塗布
最後に、フレームからリアディレーラーに接続する部分もグリスアップを行います。
リアディレーラーのアジャスター内部から、1cmほどの綿ぼこりのようなものですがでてきました、これが先に述べたワイヤーの動きを妨げるポリマーコートのカスです。しっかりと取り出しておきます。(画像の黄色い丸印)
リアディレーラーのワイヤー固定ボルトとワッシャーです、汚れていたのでパーツクリーナーで清掃、脱脂をしました。この作業でインナーワイヤーがすっぽ抜けて緩んでしまうことが予防できます。
チェーンの伸び率が、寿命に近づいてきていましたのでオーナー様に確認しチェーンも交換いたしました。近々レースに出場されるとのことでしたので新しいチェーンに塗布された防錆剤をパーツクリーナーで落とします。(通常使用の場合新品のチェーンはそのまま注油しご使用いただいて構いません)
油膜の無い素の状態のチェーンにワコーズ社製の【スピード】というチェーンオイルを一滴づつ注油します。このチェーンオイルは、薄く強靭で低抵抗な皮膜が形成され、ペダルが軽く回せるようになり当店で【一番人気】のチェーンオイルです。
一コマずつの注油の場合チェーンのサイドプレート部分にオイルが付着しないことがありますので、チェーンを指でなぞりサイドプレートにもチェーンオイルを行きわたらせ、シフト調整を施し出庫となりました。
今回の異音は、トルクがかかっていない状態での回転で発生していた僅かな音で、スプロケットギアの歯の山にチェーンがはまり込む際の音であると推測されます。普段使いのホイールと決戦用のホイールを2本お持ちで、双方に減り方の違うスプロケットが装着されていましたので、そのあたりでチェーンのかかり方の違いが発生していたものと思われます。お客様にしっかりと作業の内容と原因をご説明させていただきました。
結論としまして、リアディレーラーのB軸を調整すると音が出たり消えたりすることが判明しましたが、旧型RD-9000のB軸調整は曖昧でバッチリ調整を定めても動いてしまうのです。
シマノ現行型リアディレーラーに採用されていますシャドータイプリアディレイラーは、B軸のアジャストがミリ単位で正確に行えるように改善されていますので、交換されると今回のような異音は解消できるようになると思われます。