PINARELLO MARVEL ガラスコーティング&メンテナンスレポート

2021.04.12
メンテナンス関連

こんにちは!メカニックの渡辺です。

今回は、PINARELLO MARVEL(ピナレロ マーベル)のガラスコーティングとメンテナンスをしていきます。

 

 

バラシ、クリーニング作業

完成車の状態ですので、フレーム単体になるようバラしていきます。

バラす前に写真やメモをとり、組み方やネジの種類など間違いのないようにします。

ただ、完成車の中には正しい状態で組まれていないことが稀にあるため、新品でない場合は特に注意ながら作業をしています。

 

 

外したパーツなどは、ワコーズの『チェーンクリーナー』を使い洗浄していきます。

油性のクリーナーですので乾きにくく、頑固な油汚れもしっかりと落とすことができます。

クリーニングが済んだ細かいパーツは無くさないよう、綺麗なトレーに並べていきます。

 

 

ゴム系のシール材は、溶剤が付着すると傷めてしまうこともあるので、ワイプオールというペーパーウエスで、念入りに拭きあげていきます。

 

 

 

ハブベアリング、フリーギアのオーバーホール

続いてフロントハブのグリスアップです。

セラミックグリスで軽い回転と耐久性重視の塗布量で仕上げました。

 

 

リアハブの三つ爪フリーギアには、ちょう度の低いDTSwissの『マルチパーパスグリス』を使用しました。

いいお値段のグリスですが、軽い回転と潤滑性能、空回りなど不具合の発生も考えにくく、三つ爪フリーギアには適切なグリスであると認識しています。

 

 

 

フレームの洗浄

次に、フレームを洗浄していきます。

ワコーズの『フォーミングマルチクリーナー』を使い、泡の力で水溶性の汚れを柔らかくして行きます。

 

 

汚れた状態で擦らないことがフレームをきれいに保つコツです。

水でこまめに流しながら、中性洗剤でやさしく洗いあげます。

 

 

フロントフォークのブレーキ取り付けの穴には、前輪から巻き上げられた砂がつまっていたため、パイプブラシでクリーニングしました。

 

 

 

磨き作業(ポリッシュ作業)

磨きの第一工程は、水気を取り除きワコーズの『ハードカット』と『ウールバフ』で消すことのできる擦り傷を除去していきます。

 

 

磨きの第二工程は、ワコーズの『フィニッシュカット』と『スポンジパッド』で第一工程のヘアライン状の跡を消して鏡面に近づけて行きます。

 

 

よく見ると、フレームに施されている厚塗りのクリア塗装部分は内部に筋が見受けられました。

年数が経過しているバイクにはよく見受けられる現象です。

ペイントが固くなるにつれフレームのしなりにペイントが追従できず起こるのですが、バイクの性能には全く問題が無いことですので、ご安心ください。(私自身のバイクでも起こっておりメーカーに画像で確認してもらったことがあります。)

 

 

 

コーティング作業

いよいよコーティング作業です。

磨ききったコンパウンドの粉をエアガンで吹き飛ばしアルコールで下処理を行います。

なお、メンテナンスされていない使用頻度の低いコンプレッサーは、オイルや水分が吹き出ることがあるので、このような用途では使用注意です。

 

 

続いて4℃REST(クレストヨンド)の【ガラスの鎧】と【カガミの甲冑】を順に施工していきます。

ここからは、塗布したコート剤が固まる前に水と反応させるなど、手早く行う作業のため画像が少なくなりいます。

 

 

施工が完了したらしっかりと乾燥させ、【ガラスの盾】で仕上げます。

 

 

 

組み立て作業

さて、ここからは組み上げに入っていきます。

まずは異音対策でワコーズの『ブレーキプロテクター(パッドの鳴き止めペースト)』を下地として薄く塗布し、ベアリング本体にはデュラエースグリスを使用し汗や水からベアリングを守ります。

 

 

ロアベアリングも同様にフレーム側には鳴き止めペーストを塗布し、ベアリング(下の写真の赤い矢印)にデュラエースグリスを塗布。

ちなみに、下の写真の黄色い矢印部分は、線傷を除去するためしっかりとバフがけを行った部分です。

作業中に鏡のような美しい映り込みを見ることができ、テンションマックスで作業ができました。

 

 

ディレーラーハンガーにも異音対策を行い、小さな取り付けボルトには中強度のゆるみ止めを塗布しました。

 

 

 

ディレーラーハンガー修正

作業中、ディレーラーハンガーはリム部分で8mmほどの狂いがあったため、ハンガーを傷めない範囲で修正を行いました。

 

 

かじり付き防止のペーストを塗布したリアディレーラーを取り付けます。

(下の写真は再現です。本締めの際は左手でディレーラー部をしかっり保持しています。)

 

 

ブレーキの取り付け。

こちら(下の写真青い矢印の部分)にもディレーラーハンガーと同様に、中強度のゆるみ止めを塗布してトルクレンチで締め付けます。

 

 

小さなボルト(下の写真黄色い矢印の部分)も、腐食や電着の予防でグリスを塗布し固定します。

 

 

 

ワイヤリング作業

ブレーキワイヤーは、デュラエースのワイヤーを使用しました。

アウターワイヤーには切断面の処理を施し、抵抗が増えない量の専用グリスを薄く塗布し、ベストな状態で仕上がりました。

ご入庫の時と比べて、ブレーキの引きとタッチは格段によくなり快適なライドができると思います。

 

 

シフトワイヤーは良い状態でしたので、今回は取り替えはしませんでした。

しかし、アウターキャップがノーマルであったためフレームのアウター受け部分と擦れ、抵抗が発生することがあるので、ノズルのついたキャップ(下の写真の黄色矢印)に交換しました。

 

 

ご入庫時には付いていなかった、サポートボルトプレートもしっかりと貼り付けました。(下の写真の黄色矢印)

このプレートなしでサポートボルトを締めこまれていたため、ディレーラー台座のリベットの塗装が少しはがれていました。

そして、フロントディレーラー取り付け面に摩擦を増やすペースト(下の写真の赤矢印)を塗布して、過度な力が加わった際の不意のディレーラーのずれを予防します。

 

 

サポートボルトプレートもいい感じで収まっており取り付け剛性が上がっていると思います。(下の写真の黄色矢印)

ボトムブラケットから伸ばした黒いライナーの先に、蛇腹のインナーワイヤーのシール(こちらもご入庫時付いていませんでした)をとりつけたので、雨水が入り込みシフト操作が徐々に重くなる心配がなくなりました。(下の写真の青矢印)

ディレーラーの調整ねじがフレームに映り込んできれいですね。(下の写真の赤矢印)

 

 

クランク組み付けは2本のボルトを交互に少しずつしめるのが正しい締め方です。

(下の写真は再現です。実際の締め付けは両手を使いパーツと工具を安定させています。)

 

 

 

そして、ついに完成!

ガラスコーティングされた車体に光が反射して新車のように輝いています!

Campagnolo(カンパニョーロ)のディープホイールの迫力とPINARELLO独特のフレーム造形がマッチしてとってもカッコよく仕上がりました!

オーナー様へお引き渡しするのが楽しみです!

 

 

今回もレポートをご覧いただきありがとうございました!

あなたのバイクのご入庫もお待ちいたしております!

 

 

 

 

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