こんにちは!メカニックの渡辺です。今回は【PINARELLO MARVEL】(ピナレロ マーベル)のガラスコーティングとメンテナンスをしていきます。
バラシ、クリーニング作業
完成車の状態ですので、フレーム単体になるようバラしていきます。
外したパーツなどは、ワコーズチェーンクリーナーを使い洗浄していきます。油性のクリーナーですので乾きにくく、頑固な油汚れもしっかりと落とすことができます。クリーニングが済んだ細かいパーツは無くさないよう、綺麗なトレーに並べていきます。
ゴム系のシール材は、溶剤が付着すると傷めてしまうこともあるので、ワイプオールというペーパーウエスで、念入りにふきあげていきます。
分解する前に写真やメモをとり、組み方やネジの種類など間違いのないようにします。
ただ、現状が正しい状態で組まれていないことが稀にあるため、新品でない場合は特に疑いながら作業をしています。
ハブベアリング、フリーギアオーバーホール
フロントハブのグリスアップです。セラミックグリスで軽い回転と耐久性重視の塗布量で仕上げました。
リアハブの3つ爪フリーギアには、ちょう度の低いDTSwissのマルチパーパスグリスを使用しました。
いいお値段のグリスですが、軽い回転と潤滑性能、空回りなど不具合の発生も考えにくく。三爪フリーには適切なグリスであると認識しています。
フレームの洗浄
次に、フレームを洗浄していきます。ワコーズフォーミングマルチクリーナーを使い、泡の力で水溶性の汚れを柔らかくして行きます。
汚れた状態で擦らないことがフレームをきれいに保つコツです。水でこまめに流しながら、中性洗剤でやさしく洗いあげます。
フロントフォークのブレーキ取り付けの穴には、前輪から巻き上げられた、砂がつまっていたためパイプブラシでクリーニングしました。
磨き作業
水気を取り除きワコーズのハードカットとウールバフで消すことのできる擦り傷を、消していきます。
磨きの第二工程は、ワコーズのフィニッシュカットとスポンジパッドで前行程のヘアラインを消して鏡面に近づけて行きます。
カーボンの網目の柄が見える部分の、厚めのクリア塗装部分は内部に筋が見受けられました。
年数が経過しているバイクにはよく見受けられます。ペイントが固くなるにつれフレームのシナリにペイントが追従できず起こるのですが、機能には全く問題が無いことですので、ご安心ください。(自分のバイクでも起こっておりメーカー画像確認してもらったことがあります。)
コーティング前の下処理
磨ききったコンパウンドの粉を、エアガンで、吹き飛ばしアルコールで下処理を行います。
(メンテナンスされていない、使用頻度の低いコンプレッサーは、オイルや水分が吹き出ることがあるので、このような用途では使用注意です)
コーティング作業
ガラスの鎧と鏡の甲冑を順に施工していきます。塗布したコート剤が固まる前に水と反応させるなど
手早く行う作業のため画像が少なくすみません。
施工が完了したらしっかりと乾燥させ、ガラスの盾で仕上げます。
組み立て作業
さて、ここからは組み上げに入っていきます。異音対策でワコーズブレーキパッドの鳴き止めペーストを下地として薄く塗布し、ベアリング本体にはデュラエースグリスを使用し汗や水からベアリングを守ります。
ロアベアリングも同様にフレーム側には鳴き止めを塗布し、ベアリング(赤い矢印)にデュラエースグリスを塗布
黄色い矢印部分は、線傷がありしっかりとバフがけを行った部分です。作業中に鏡のような美しい映り込みを見ることができテンションマックスで作業ができました。
ディレーラーハンガーにも異音対策を行い、小さな取り付けボルトには中強度のゆるみ止めを塗布しました。
ディレーラーハンガー修正
ディレーラーハンガーはリム部分で8mmほどの狂いがあったためハンガーを傷めない範囲で修正を行いました。
かじり付き防止のペーストを塗布したリアディレーラーを取り付けます。
(画像は再現で、本締めの際は左手でディレーラー部を保持しています)
ブレーキの取り付け、こちらも中強度のゆるみ止めを塗布してトルクレンチで締め付けます。
小さなボルトも、腐食や電着の予防でグリスを塗布し固定します。
ワイヤリング作業
ブレーキワイヤーはデュラエースのワイヤーを使用しました。アウターワイヤーには切断面の処理を施し、抵抗が増えない量の専用グリスを薄く塗布しベストな状態で仕上がりました、ご入庫の時と比べてブレーキの引きとタッチは格段によくなり快適なライドができると思います。
シフトワイヤーは良い状態でしたので、取り替えはしませんでしたがアウターキャップがノーマルであったためフレームのアウター受け部分と擦れ抵抗が発生することがあるので、ノズルのついた(黄色矢印)キャップに交換しました。
ご入庫時に付いていなかった、サポートボルトプレートもしっかりと貼り付けました。(黄色矢印)
このプレートなしでサポートボルトを締めこまれていたためディレーラー台座のリベットの塗装が少しはがれていました。
フロントディレーラー取り付け面に摩擦を増やすペースト(赤矢印)を塗布して、過度な力が加わった際の不意のディレーラーのずれを予防します。
サポートボルトプレートもいい感じで収まっており取り付け剛性が上がっていると思います。(黄色矢印)
入庫時にはついていなかったのですが、ボトムブラケットから伸ばした黒いライナーの先に、蛇腹のインナーワイヤーのシールをとりつけたので、雨水が入り込みシフト操作が徐々に重くなる心配がなくなりました。(青矢印)
ディレーラーの調整ねじがフレームに映り込んできれいですね。(赤矢印)
クランク組み付けは2本のボルトを交互に少しずつしめるのが正しい締め方です。
(写真はイメージです。実際の締め付けは両手を使いパーツと工具を安定させています)
完成
その他作業すべてをご紹介できていませんが、いよいよ完成です。
ガラスコーティングされた車体に光が反射して新車のように輝いています!
カンパのディープホイールの迫力とピナレロ独特のフレーム造形がマッチしてとってもカッコよく仕上がりました!オーナー様 楽しみにしていたくださいね!
今回もレポートをご覧いただきありがとうございました!あなたのバイクのご入庫もお待ちいたしております!